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全国民が安堵 アミメニシキヘビが捕獲 あらためて確認したい「賃貸とペット」

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文/朝倉 継道 イメージ/©dwiputras・123RF

横浜市「ニシキヘビ行方不明事件」終焉

新型コロナウイルスの感染再拡大により、「自粛の連休」となったゴールデンウィーク明け。いきなり世間を騒がすニュースとなったのが、横浜市戸塚区で起きた「ニシキヘビ行方不明事件」だ。

発生したのは5月6日のこと。アパート2階の一室で飼われていたアミメニシキヘビが、飼い主の留守中に姿を消した。消えたヘビの体長は、報道によって違いがあるが約3.5メートル。体重は10kg超とのことで、巨体といっていい。

飼育用ケージのロックが外れ、部屋の網戸も10cmほどズレていたということで、ヘビは戸外に逃げ出したものと思われていたが、5月22日の夕方になって、同じアパートの屋根裏にいるところを発見された。程なく、身柄を確保されることとなった。

アミメニシキヘビは、毒は持たないが、今回ほどのサイズになると、エサとなる動物などを締め上げる力が非常に強い。人にも危害が及ぶおそれがあることから、事件発生後は警察や消防など、多人数が動員されての捜索が続いていた。

さらには、近所の保育園も園児の散歩を取りやめるなど、地域を不安に陥れていた騒動は、約半月を経て、解決をみることとなった。

さて、そんな一件落着の事件だが、賃貸住宅オーナーや住人からの注目も浴びている。

なぜなら、舞台は賃貸住宅で、しかも、この物件は報道によると「ペット不可」だった。アミメニシキヘビは、オーナーや管理会社には無断で、数年前からこっそりと飼われていたらしい。

そのため、「ウチの物件でも危険な動物を無断で飼育している入居者さんがいるのではないか」、「そういう人が現れては困る」と、いうことで、賃貸借契約の条文を見直したり、急遽注意喚起したりするオーナーや管理会社もでてきているようだ。

そこで、この記事では、あらためて「賃貸とペット」について整理をしてみたい。

賃貸アパート・マンションでの契約にありがちな、ペット飼育の制限については、利害関係がもっとも深いはずのオーナーが知らずにいることも、意外に多く存在したりする。

犬・猫はダメでもヘビはOK?

賃貸住宅に住んでいて、「爬虫類など怖くて大嫌い。物件内でヘビなんか飼われたらたまらない」と思っている人は、賃貸借契約書を隅々まで読んだことがなければ、ぜひこの機会に目を通してみるべきだ。

犬はノー、猫もノー、毒蛇や毒虫、猛獣ももちろん飼ってはダメ。でも、それ以外の「観賞用の小鳥、魚などであって、明らかに近隣に迷惑をかける恐れのない動物」は、飼うのが自由となっていることがある。

つまりこの場合、小鳥は明らかにOKだ。ハムスターやモルモットも同様だろう。ウサギもそうかもしれない。さらに、昆虫、両生類、トカゲやヘビといった爬虫類も、大型のものでなく毒もなければ近隣に迷惑をかけるおそれのない動物とみなされる可能性は高いだろう。

こうした状況がなぜ生じるのかといえば、元は国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」に辿ることができる。これをひな型にしたうえで、ペット飼育に関する部分にアレンジを加えずにおくと、契約内容は自動的に上記のかたちとなる。

知るなかでは、鳥アレルギーも持つ鳥嫌いのオーナーさんが、自身の賃貸併用住宅(ご承知のとおり賃貸物件と同じ建物内にオーナー宅もある)での契約内容がこの状態になっていることを知り、大いに慌てた例がある。

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後追いで「ダメ」は難しい

では上記に該当する場合で、オーナーがあとから不都合に気づき、「爬虫類はこの物件では一切飼ってはダメです」などと、後追いで禁止事項を定めたところ、すでに「近隣に迷惑をかけるおそれのない」ヘビあるいはトカゲなどを飼っていた入居者さんがいたとすれば、どうなるだろうか? つまり、無毒で体が小さくそれ以上成長もしないといった種類の個体だ。

この場合、入居者さんにとって新たな禁止事項の制定は、いきなりの「不利益な契約内容への変更」となる。応じる義務はなく、拒否すればそれが認められる可能性も当然高くなるだろう。もしも争えば、「ペットを手放す必要はなく、部屋を明け渡す必要もない」と、通常は判断されることとなるはずだ。

では、同じシチュエーションで、「契約更新の際は、新しい契約内容を承諾してくれ」あるいは「飼うなら更新せずに退去してくれ」と、オーナーが頼んだ場合、話は通るだろうか?

答えは、やはり難しい。入居者側から、「このペットは手放せないし、引っ越しさせられるのも困る」と、元の契約内容での更新を求められれば、ここで借地借家法が壁となる。いわゆる正当事由を成立させられないかぎり、オーナー側としては要求を押し通せないことになりそうだ。

そのペットは「信頼関係」を破壊する?

賃貸住宅でのペット飼育に関しては、契約内容がまず重要であるほかに、そのペットを飼うことが、貸し主・借り主間の信頼関係を破壊するものであるか否かが、もうひとつの重要な観点となる。賃貸経営でのトラブルの際よく出てくる、「信頼関係破壊の法理」だ。

ゆえに、賃貸借契約書には「ペットは不可」と、たとえ動物全般を指して記されていたとしても、ハムスターやモルモットのような小動物や、小型で安全な爬虫類などの場合……

「鳴き声で周りに迷惑をかけるわけではない」

「居室や建物をことさら毀損、劣化させるものでもない」

こうした理由から、入居者さんがこれらを飼いたいといえば、一律に拒否できない可能性も考えられる。

また、この「信頼関係」は、ペット不可の場合よりも、むしろペット可のケースで、おそらく論点になりやすいだろう。

例えば、飼い主である入居者のしつけや管理がよくないため、犬がほかの入居者さんをたびたび噛んだり、吠え声が長時間にわたって激しく、近隣に迷惑をかけたりといった事態が生じた場合、オーナーが入居者に退去を申し入れるにあたっては、そもそも飼育自体はOKだ。

そのため、争いになれば、判断は「信頼関係の破壊が客観的に生じているか?」に集約されることとなるだろう。

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この記事を書いた人

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